13. 水鏡の向こう 「店主殿、我が悪かった。心の底より反省しておる。だから、そろそろ機嫌を直してはくれぬか」 娘の機嫌を取るように、龍人はそっとささやいた。 「それとも、それほど我よりも、母君のほうがよいのかね? 後生だから、戻ってきてくれたまえ。これでは……守ることさえ、できないではないか」 「……のう、そなた、聞いておるのか」 さざなみひとつ立たない泉が、佇む男のことばを飲み込んでいく。 「我に、約束を守らせてくれ。フェア……」 水際にひざまずき乞うる、その行為の愚かしさなど、己が一番よく知っている。 どれほど望んだところで、泉に溶けた娘を現し世に戻すことなど、叶わぬのだから。 |